1. プロフィール
名前:ブレア・アッシュ(Blair Ash)
年齢:24歳
性別:女性
身長:170cm
2. 紹介及び特記事項
彼女は多分、実験体の中でも我々に最も強い憎しみを抱いている実験体だと思います。
皮肉なことに、今の彼女はアグライアを恩人だと思っていますが。
覚えていますか?■■■■年■■月にあったVF暴走事故。
あの時、どうやら彼女も父親と一緒にその場にいたそうです。
ちょうどその日は彼女の誕生日だったらしく、二人は素敵な一日を期待しながら外に出かけたんでしょうね。
不幸にも、誰も予想だにしていなかった大爆発が街のど真ん中で発生し、
そこにいた多くの人々が巻き込まれてしまいましたが。
あの悲惨な状況の中で彼女の父親は、市民たちを安全な場所へ避難させようとしたようです。
結局のところ、危険な目に遭ってしまったようですが...
彼がそう行動したのは、恐らく元軍人だったからでしょうね。
もちろん我々としては、VFに関わる事故をマスコミに出すわけにはいかないので、別の事故に偽装しました。
VFに関わることを一般人に知らせてはならないってルールは、どんな時であれ守らないといけませんから。
唯一の家族だった父親が自分の誕生日に重傷を負い、しかもその事故が誰かによって操作され、
まともな返答も得られなかった人に、復讐心以外何も残らなかったでしょう。
ただの一般人が復讐のために行動したとしたら、かえって危険な目に遭っただけでしょうね。
いろんな意味で命がいくつあっても足りなかったはずです。
我々が手を回していなかったら、あの暴走者どころか、痕跡すら見つけられなかったでしょう。
と言うより、とっくに死んでいたでしょうね。誰も知らないうちに。
彼女は永遠に知らないでしょうけど、すべてはアグライアの計画通りでした。
彼女の父親が入院した病院があそこだったのも、担当医が我々側の人間だったことも、
彼女が徐々に自分が探しまわっていたあの化け物と同じ存在になっていくのも…
新人類とは一体何なのでしょう。
どれほどすごいものだったら、一人の人生をここまで翻弄し、壊してまで実験を行えるのでしょうか?
まあ、今更考えても無駄ですよね。大義も犠牲も、そんなこと言っていい立場でもありませんし。
いち早く研究を終わらせて、無意味な苦痛に苦しむ人を出来るだけ減らすしかありません。
…このプロジェクトが、その分の価値があることを祈るだけです。
―先任研究員 Dr. J
3. 活動記録
はい。指示通り、すべて施しました。
これなら、外部の者が調べたとしても、普通のカルテにしか見えないでしょう。
セキュリティの心配は要りません。
XMS-5に関する進捗度は以前報告したものと大きく変わりません。
今は目立つ差がないため、引き続き使用し続けることを勧めている状況です。
様子を見守る必要はありますが、前回よりは肯定的な結果が期待されます。
以前のケースで発生していた副作用である神経系の過負荷や
VF暴走の兆しについては、今のところ観察されません。
ただし、性能とは別に、使用者の精神的な高揚状態に比例して
効果が爆発的に上昇する現象が現れています。
はい。まるでVF覚醒と似ている現象です。
心構え、モチベーションと呼ばれる人間の意志...それに関わる使用者の
極端な心理状態の変化を媒介に能力が発現しているように見えます。
その他にも、使用量や時期、効果などの詳細は報告書にまとめてお伝えします。
あと、一つ質問ですが、彼女の父親はどうしましょうか?
今もほとんど死んでいるのと同じ状態ですが、
変数は少ない方がいいと思いますので、先に処分しておいた方がいいかと。
…そうですか。承知しました。
では、万が一のため、治療目的ではなく最低限の生命維持程度の保護と監視ということで。
かしこまりました。
―アグライア病院の関係者との音声記録