1. プロフィール
名前：リ・ダイリン(李 黛琳、Li Dailin)
年齢：26歳
性別：女性
身長：165cm
2. 紹介及び特記事項
あー...名前を聞くだけでやる気がなくなる実験体ですね。
何をやってもめんどくさがるのも問題ですが、いつも酔っているせいで会話が成り立ちません。
面談をしても、まともな返事は正直期待できませんね。
彼女が興味を示すのは、お酒だけです。
お酒のこととなると、あれだけめんどくさがっている戦闘ですら積極的になります。
武闘家としての一面も、お酒を飲んだ時にしか見られません。
普段は武術をほとんど使っていませんが、お酒が入ると体が自然に動くようです。
歩く前から武術の鍛錬をしていたそうですし、体が無意識に覚えているのでしょう。
まあ、本人はそのことをとても嫌がっているようですが。
少し変わったところと言えば、アルコール依存症は普通、家庭環境の影響を受けることが多いですが...
彼女の両親は修行の邪魔になると思い、一切口にしなかったようです。
同じ理由で、娘にも愛情を注いだことがないようですが。
彼女がお酒を飲み始めたのは、両親への反抗の一種だったのかもしれませんね。
そういえば、興味深いデータが一つありまして。
何回か記憶消去を行わずに彼女を実験に参加させたことがありますが、
その時、前の記憶と混同し、お酒を飲んでいない状態で武術を使ったことがありました。
つまり、全く酔っていないにも関わらず、自分が“酔っている”と思い込ませ、
酔っているフリをしていた、ということになります。
そこまでして忘れたいのは、過去なのか、それとも今の自分の立場なのかは...今も謎ですね。
―心理科学専門研究員 Dr. H
彼女が「考えるのもめんどくさい」と言いながら危険な状況に身を投げ出したり、
禁止区域で横になってしまうのが、単に「酔った」からと思ったら、それは大間違いだ。
彼女は見た目よりも自己肯定感が極度に低い。自分も、自分の人生も価値がないと思っているからな。
自分自身のことを大切にしないから、どうでもいいと思っているタイプってことだ。
そのくせ、説教を嫌うのは...多分、一種の防衛機制だろう。
おかしいと思わないか？自分のやり方が間違っているのを知っていながらも
自分だけは肯定しないといけないと思っているなんてな。
―首席研究員 Dr. O
3. 活動記録
武闘家一家の一人娘でしたっけ。
今のような時代に、何百年も受け継がれている門派が残っているなんて、不思議ですよね。
ですが、一生を武闘家として鍛錬してきた父親は病死、母親は対練中に死亡。
誇りをかけた武術の対練だったとはいえ、結局は敗北となったわけですから、
その誇りというのも、失ったのではないかと。
武術に一生を捧げた人たちが、あれだけ虚しい最期を迎えてしまっては、
彼女が武術そのものを無意味だと感じるのも、無理はないですね。
当時の彼女はまだ9歳の子供でしたし、残されたのは遺産と叔父だけでした。
遺産には大きな道場もあって、中学を卒業するまでは叔父と一緒にそこで暮らしていたようです。
VFを覚醒したのは...あまりにも発見が遅かったので、正確には把握できませんが、
一緒に暮らしていた叔父が修行のために旅立ったことが、きっかけではないかと推測しています。
唯一の家族だと思っていた人すら、自分を置いて行くなんて
中学を卒業したばかりの彼女には、さぞ大きなショックだったでしょう。
叔父がいなくなった後、彼女は道場も他の門派に売り払い、
お酒を飲み始めてからは武術とは程遠い暮らしを送っていたようです。
恐らく、両親や叔父が心血を注いできた“武術の道”というものを壊したかったのでしょう。
遺産目当てで彼女に近づく者も多くいましたが、誰一人として彼女に指一本触れられなかったようです。
奇妙なことですよね...武術を嫌っているにも関わらず、覚醒したVF能力は身体能力の強化なのですから。
それ以降のことは記録されている通りです。
VFを感知した我々の要員たちが、彼女を実験体として迎え入れるために接触しました。
その頃にはもう遺産をすべて使いきっていて、李氏の乞食「李花子」と呼ばれていましたが...
常に酔ったままふらついているにも関わらず、誰も容易に近づけやしないので、村でも噂されていたようです。
彼女、我々を見た途端、「遺産なんてもう全部使っちゃったから、あっち行って」と
言ったようですが...
多分、遺産を狙っている連中だと誤解したのでしょう。
まあ、結局はお酒で説得し、島の実験体になりました。
おかげで細胞記憶と身体能力強化型VFに関する有意義なデータを得られました。
彼女が自分のVF能力を祝福と考えるか、呪いと考えるかは分かりませんが。
―先任研究員 Dr. J
